
【開催日】7月1日(火)・2日(水)
13:00 ~ 17:30 終了予定
2025年
オンライン開催 / 参加費無料
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Intro

学術理論とデータで人事に答えを提示する
人事課長 万 博 / バン ヒロシ への応答
本イベントは、架空の『人事課長 万 博』への応答という形式をもって、人と組織について、いかに考え、向き合っていくべきなのかを考えていくイベントです。
人や組織に関わる人事担当者の方々や経営者の方々が、日々持っておられる問題意識に対し、最新の学術理論やデータをもとに探究するHRダダ。前2回は、それぞれ口コミだけで650名以上の人事担当者・経営者の方々にご参加頂き、好評を博しました。
『よそでは聞けない、本当の話がきける』『すごい知見を得られる』と、数々の評価を頂いてきました。
人や組織に関する悩みは、広く、深く、終わることはありません。けれど、その厄介さに比して、世の中に出回る情報は、表面的で、商業的で、虚ろなものばかりです。
私たちは、企業再生や変革に携わっている専門家集団であり、コンサルティングファームです。人と組織の中に入り込み、データサイエンス技術や学術理論を駆使しながら、組織の現実を変えるのが私たちの毎日です。
経営や人や組織を、紋切り型で語ってしまうことへの違和感。
それは人や組織に携わる人なら誰しもが、心の底で感じているものではないでしょうか。
私たちはいつまでも、その違和感やモヤモヤしたものの実態が分からないままでいます。
その違和感を1つ1つ丁寧に拾い上げ、そこに言葉を与えること。
言葉やコンセプトを与えることで、たとえ不十分でも、そこに輪郭を与えていくこと。
手軽なソリューションや、「他社がやっているから」と言った軽薄な理由で、人・組織への施策を繰り返すのではなく、人事担当者として、いや、あなた自身として、人と組織により豊かに向き合っていくことから始めてはみないか。
HRダダは、人と組織に豊かに向き合うことで、一層深くなっていく悩みを、明るく引き受けるための探究のイベントです。

STORY
人事課長 万 博 /バン ヒロシ

余命いくばくもない夫が、妻と遊園地に行く映画。二人の最初のデートか何かの場所。
妻のお腹は大きく、二人は賑やかな人混みの中を手を繋いで歩いていく。
妻の左手にはソフトクリーム。夫の左手には妻の手が握られている。
立ち止まり、メリーゴーランドの傍で、二人はゆっくりとハグをする。
軽い抱擁は、見た目よりも多くの意味を含んでいて、二人を捉えるカメラは上空へとゆっくり上昇していく―――
そんなシーンを観てしまったら、今日を生きることが出来なくなる気がする。
普段は皮膚の下で固まって静かにしているものが、油断したスキマから湧き上がるからだ。
そんなことが起きないよう、小さな規律というか防御線を張るすべを、随分昔に身に付けていたはずだった。
SNSで流れてくる成功者のメッセージは、「継続が成功へのカギ」だと言う。習慣化が未来への扉らしい。
真意は知らないが、働いて分かったことがある。継続とは、言葉を喪うことだ、と。
何かを続けるとは、自分の中にある違和感や迷いを安っぽい感傷だとくくってゴミ箱に放り込むことで成立する。
繰り返したり、続けたりと言ったことは、暴力的なほどフィジカルなもので、色々なものを「なかったことにする」ことで可能になる。『自動操縦モードで、成功習慣を身に付けよう!』
だから、もういい歳のオレの毎日は、言葉を喪うことで成立している。毎日を生きて働いて、だからもう、本も読まなくなってしまった。
人生というのは本当に恐ろしくて、スムーズな毎日をちょっとしたスキマや割れ目から、ひっくり返してくるところがある。『世界の困難さは、ある程度法則的であるのに、しばしばよく、法則通りではない点にある』と科学者が言っていた。上手いこと言うな、と思う。
オレの繰り返す毎日に、スキマが出来たのは、Kからの「Yが帰国したから、みんなで会おうぜ」と言う短いメッセージのせいだった

「いい言葉ある?」
就職氷河期に意味もなく二留していたときに出会ったYは、初対面でいきなりそう聞いてきた。挨拶もなく、自己紹介もなかったけれど、格好をみてすぐに合点がいった。
身なりの汚さがアーティストの条件だと信じている幼いYは、曲の歌詞を考えているという。「なあ、ここにハマるワード、なんかある?」。文学青年よろしくヨレヨレの文庫本を読んでいたオレが目に留まって、聞いてみようと思ったらしかった。
一緒にいるようになって少しして、Yは遠慮がちに訂正してきた。歌詞ではなく、Lyricって言うんだ。
それから5ヶ月くらい、オレはYとつるんだ。
女の子に「ラッパーでアーティストなのがオレ」と自己紹介するYとは終始気が合わなかったが、Yにはふわっと人を巻き込むチャーミングさがあって、中身のないオレは知らぬ間に引き摺られ、客の入らないライブの設営を手伝ったり、Yの部屋でだらだらと音楽を聴いたりしていた。
Kによると、Yは普段はイギリスにいるらしく、どうやら音楽で飯を食っているらしい。
「大成功ではないけど、音楽で飯食ってるって。凄いよな?みんなで会おうぜ、万。」
オレは変なテンションのKに、仕事でいけないよ、と簡単に断りの返信をしていた。

オレは、自分なりに必死にというか、誠実に働いているつもりだ。いわゆる管理職というやつで、しかりと『管理職の罰ゲーム』も味わっているし、人事課長として現場からの批判や揶揄をぶつけられてもいる。
上司や他部門とは揉めずに上手くやること。自分の意見はしっかり持つこと。でも、それ以上にしっかりと忘れてしまうことの方が重要であること。挑戦は美しいが、最終的に得をするのは挑戦者ではないということ。バランスが重要であること。でも、その意味を深く考えてはいけないこと。コンプライアンス違反は事故みたいなものだが、雇われる側にはいつも致命傷になること。
誰かから教わったのではなく、自分で知らぬ間に学んできた。
色々な人や壁に挟まれて、苦笑いが上手くなって、言いたかった沢山のことを言わない自分になるようプログラミングしてきたのかもしれない。
ポケットから携帯を取り出す。Kのメッセージには、「懐かしい」という四文字の下にリンクが貼ってあった。
こういうのは、開いてはいけないやつだと直感する。気安くタップすると、一緒によく聞いた音楽なんかが流れてきたりして、感情的になってしまうからだ。
帰宅ラッシュで満杯のバス。その不規則な揺れで、身体の奥にあった今日の疲れがじんわりと拡がっていく。
イヤホンをして、オレはリンクを開いてみた。
やっぱり、開いてはいけないやつだった。埃っぽいYの部屋でよく聞いたラップ。曲名はもう思い出せないが、ビートと掠れた声が、口の中に嫌な苦みを拡げてくる。
音なのか、記憶なのか、オレの腹の底に何かが到達した音がした。
こういうやつは絶対に聞いてはいけない。油断すると、ありふれたリズムと人生の凡庸さを謳う安っぽいLyricのせいで、深い裂け目から、諦念とも希望とも呼べそうなもの、輪郭がないせいで、何かの始まりを予感させてしまうものが、湧き上がってきてしまうから。
バスは揺れる。いくつかのバス停で停車して、ときに車体を大きく揺らして進む。
オレは、やったこともないくせに、ラップみたいな真似事を、心の中で口ずさんでしまっていた。


program
本イベントは、9つのセミナープログラムからなる、
オンラインイベントです。
ご都合にあわせて、いずれか一つのセミナーのみ、
ご参加いただくことも可能です。
【開催日】7月1日(火)・2日(水)
13:00 ~ 17:30 終了予定
オンライン開催 / 参加費無料
< 1 >Academic
「人事施策に経営効果はなかった⁉」
衝撃の論文から始まる旅の行きつく先は?
人事担当者として、今向き合うべきこと
<2>Case&Data
さあ、介入をはじめよう。
変化の時代の人事部門の役割-HR for Agile とAgile for HR-
<3>Academic
戦略論から考える『語られない人的資本経営の急所』
<4>Case&Data
組織の強みを活かす戦略人事の困難
ベストプラクティスと企業独自性の間で
<5>Academic
組織を閉塞させる『大企業病』。
その生息域と処方箋を求めて
<6>Data
人事は、解決すべき問題を、いかに見極め、順番づけするのか?
データが明らかにする『HRの変革手順』
<7>Data
自律的キャリアと教育研修を考える。
『自分で学ぶ』は成長を可能にするのか?
<8>Data
今更ながら、本当のマネジメントを整理する
データで紐解く、教科書を超えて『やりきらせて結果を出す』マネジャーの行動
< 9 >Wrap Up
いま、人と組織に関わる「あなた」がすべき、『立ち止まる』ということ